上下の歯がうまく噛み合わない、食べ物を噛みにくいと感じていませんか。
上下の歯や顎が適切に噛み合っていない状態は、一般に「咬合異常」または「不正咬合」と呼ばれます。
咬合異常には、歯の位置や傾きが中心となっているものと、上顎・下顎の大きさや位置など、骨格が関係しているものがあります。
見た目だけでなく、咀嚼、発音、口の閉じやすさ、歯の清掃性などに影響することがあるため、気になる場合は歯科や矯正歯科で状態を確認することが大切です。
「咬合」とは、上下の歯が接触する関係や、下顎を動かして噛む働きを指します。
咬合には、歯だけでなく、顎の骨、顎関節、筋肉なども関係しています。そのため、噛み合わせがずれて見える原因は一つではありません。
歯の位置や歯並びによって噛み合わせが悪くなっている場合は、歯性の不正咬合と考えられます。
一方、上顎や下顎の大きさ、位置、左右差などが関係している場合は、骨格性の不正咬合や顎変形症に該当することがあります。
多少の歯並びや噛み合わせのずれがあっても、必ず治療が必要とは限りません。日常生活への支障、歯や歯周組織への負担、成長への影響などを確認したうえで、治療の必要性を判断します。
参考:日本歯科医師会「咬合、かみ合わせ」
咬合異常には、次のような種類があります。
上の前歯や上顎が、下の前歯や下顎よりも前方へ出ている状態です。一般に「出っ歯」と呼ばれます。
歯の傾きが原因の場合と、上下の顎の大きさや位置が関係している場合があります。
下の前歯が上の前歯よりも前方で噛み合っている状態です。「受け口」と呼ばれることもあります。
歯の傾きによるものと、下顎が大きい、上顎が小さいなどの骨格によるものがあります。
歯が重なったり、歯列からずれて生えたりしている状態です。「乱ぐい歯」や「八重歯」も叢生に含まれます。
歯の大きさに対して顎が小さく、歯が並ぶためのスペースが不足している場合などに起こります。
奥歯を噛み合わせても、上下の前歯の間に隙間が残る状態です。
前歯で食べ物を噛み切りにくい、発音しにくい、口を閉じにくいなどの問題が生じることがあります。
上の前歯が下の前歯を深く覆っている状態です。
程度によっては、下の前歯が上顎の歯ぐきへ当たったり、前歯や顎関節へ負担がかかったりすることがあります。
上下の歯列の一部が、通常とは反対の位置関係で噛み合っている状態です。
片側だけに現れる場合は、噛む位置や顎の成長、顔の左右差に関係することがあります。
上顎または下顎の大きさや位置に骨格的な問題があり、顔貌の変化や咀嚼・発音などの機能障害を伴う状態です。
下顎前突、上顎後退、下顎後退、開咬、顔面非対称などがあり、複数の異常が組み合わさることもあります。
参考:日本口腔外科学会「顎変形症などの骨格性の不正咬合」
咬合異常には、生まれつきの特徴や成長過程、生活習慣、歯の病気など、さまざまな要因が関係します。
主な原因として、次のようなものがあります。
原因が複数重なっていることもあります。
特に子どもは、顎や歯列が成長している途中です。歯の生え替わりによって一時的に歯並びが乱れて見えることもあるため、見た目だけで治療の必要性を判断することはできません。
咬合異常があっても、自覚症状がほとんどない方もいます。
一方、状態によっては次のような問題が起こる可能性があります。
咬合異常があるからといって、すべての方にこれらの問題が起こるわけではありません。
また、顎の痛み、頭痛、肩こりなどが、必ず噛み合わせによって生じているとも限りません。症状だけで原因を決めつけず、歯、顎関節、筋肉などを含めて診察を受ける必要があります。
子どもの噛み合わせは、乳歯から永久歯への生え替わりや顎の成長によって変化します。
一時的な歯並びの乱れに見えても正常な発達過程である場合がある一方、成長を利用した治療が検討されることもあります。
次のような状態がある場合は、歯科や矯正歯科へ相談しましょう。
「早く治療を始めれば必ずよい」とは限りません。咬合異常の種類や成長段階によって適切な開始時期が異なるため、経過観察を含めて判断します。
大人になってからでも、矯正歯科治療を検討できる場合があります。
また、もともとの不正咬合だけでなく、歯周病、歯の欠損、歯のすり減り、詰め物や被せ物の変化などによって、噛み合わせが変わることもあります。
以前は問題がなかったのに、徐々に噛みにくくなった場合は、歯並びだけでなく、虫歯、歯周病、顎関節、補綴物などの確認が必要です。
転倒、交通事故、スポーツなどで顔や顎を打った後に、急に噛み合わせが合わなくなった場合は注意が必要です。
顔や顎の骨折、歯の脱臼・破折などが隠れている可能性があります。
特に次のような症状がある場合は、早めに歯科口腔外科などを受診してください。
呼吸障害や多量の出血、意識障害を伴う場合は、救急受診が必要です。
参考:日本口腔外科学会「事故で顔面を打撲した」
噛み合わせや歯並びが気になる場合は、まず歯科または矯正歯科へ相談します。
歯の位置や傾きが主な原因であれば、矯正歯科での治療が中心となります。
顎の骨格や顔の左右差が大きい場合、外科手術が必要と考えられる場合は、矯正歯科と歯科口腔外科が連携して診断・治療を行います。
急な痛みや開口障害など、顎関節の症状が中心の場合も、歯科や歯科口腔外科が相談先となります。
咬合異常の診断では、症状や希望を確認したうえで、歯並び、顎の位置、顔貌などを調べます。
一般的には、次のような診察や検査が行われます。
必要な検査は症状や治療方針によって異なります。
検査結果をもとに、歯の位置が中心の問題か、顎の骨格が関係しているかを判断します。
咬合異常の治療は、原因、年齢、成長段階、症状、治療の希望によって異なります。
日常生活への支障が少なく、歯や歯周組織への影響も小さい場合は、定期的に経過を確認することがあります。
虫歯や歯周病を防ぐための歯磨き指導、クリーニングなども重要です。
虫歯、歯周病、失った歯、合っていない詰め物や被せ物などが噛み合わせに影響している場合は、それぞれの原因に対する歯科治療を行います。
矯正装置を使って歯を少しずつ移動させ、歯並びと噛み合わせを整えます。
ワイヤー矯正やマウスピース型の装置などがありますが、すべての咬合異常に同じ装置が使用できるわけではありません。
歯や顎の状態を検査したうえで、適した方法を判断します。
骨格性の問題が大きく、矯正歯科治療だけでは十分な改善が難しい顎変形症では、顎の骨を移動させる顎矯正手術を検討します。
一般的には、手術前の矯正、顎矯正手術、手術後の矯正を組み合わせて治療します。
矯正歯科治療では、痛みや圧迫感、口内炎、歯磨きの難しさなどが生じることがあります。
治療内容によっては、虫歯や歯肉炎、歯根吸収、歯肉退縮、治療後の後戻りなどが起こる可能性もあります。抜歯が必要になる場合や、治療期間が長くなる場合もあります。
顎矯正手術では、腫れ、痛み、出血、感染、知覚の変化、プレートに関する問題、後戻りなどのリスクがあります。
また、顎関節の痛みなどを改善する目的で、十分な診断を受けずに歯を削ることは避けましょう。歯を削る処置は元に戻せないため、原因と治療目的を確認することが大切です。
治療前には、期待できる変化だけでなく、治療期間、費用、リスク、代替となる方法について説明を受けましょう。
一般的な矯正歯科治療は、原則として自由診療です。
ただし、厚生労働大臣が定める疾患に起因する咬合異常、一定の永久歯萌出不全、手術が必要な顎変形症に対する術前・術後の矯正歯科治療などは、保険診療の対象になる場合があります。
保険診療を受けられるのは、所定の施設基準を満たし、届出を行っている医療機関に限られます。
該当するかどうかは自己判断せず、対応する矯正歯科や歯科口腔外科へ確認してください。
参考:日本矯正歯科学会「矯正歯科治療が保険診療の適用になる場合とは」
咬合異常は、歯の位置、顎の骨格、成長、口腔習慣、虫歯や歯周病など、さまざまな原因によって起こります。
このような場合は、歯科または矯正歯科で相談しましょう。
顎の骨格に大きな問題がある場合や、外科手術が必要な場合は、歯科口腔外科との連携が必要になります。
咬合異常とは、上下の歯や顎が適切に噛み合っていない状態です。矯正歯科では「不正咬合」と呼ばれることもあります。
代表的なものには、上顎前突、反対咬合、叢生、開咬、過蓋咬合、交叉咬合、顎変形症などがあります。
咬合異常があっても必ず治療が必要とは限りませんが、咀嚼、発音、口の閉じやすさ、歯磨きなどに支障がある場合は、歯科や矯正歯科で診察を受けることが大切です。
特に、顔や顎を打った後から急に噛み合わせが変わった場合は、骨折などの可能性があるため、早めに歯科口腔外科などを受診してください。